研究内容
音を研究する目的はたくさんあります。 音に関連する研究、マイクで欲しい音だけをとったり、スピーカで音を出したり、音を加工したりしています。
研究の背景
社会環境でみれば、核家族化の上で少子高齢化が進んだことによる独居老人の問題や、携帯電話の普及からスマホの普及に至るも結局はリア充か?といったことまで、考えてみると、常日頃からのリアルなコミュニケーションが、安心だったり、安全だったり、心の充足を与えていることが想定されます。しかし、物理的に遠くに離れていたり、時間がお互い合わなかったり、あまりに密でお互い疲れたり、といったことから、コミュニケーションをとること自体になぜかパワーが必要だったりします。
研究の目的
以上のような背景状況に基づき、これをなんとか音メディアの活用で少しでも緩和し、安心・安全で、かつちょっと「つながってる感」を生み出せるようなことができないか、というのが出発点です。
研究概要
では、具体的にはどういうことができるでしょうか?
その答えが分かっていれば研究の必要はありません。私たちの研究室では、まず、音を使ったコミュニケーションを行うにあたっての基本である、音を録って、音を分析・加工して、そして相手にその音を聞いてもらう、という一連の流れの中で、今、何が求められているか、そして、それが上の目的を達成するものか、を考えながら研究を進めて行こうと思っています。
音を録る
音はマイクを使って収音します。この時、いくつかの問題があります。その人の声だけ欲しいのに、周りの雑音が入ってしまう、その人の声が小さくてマイクにうまく入らない、残響がついて聞き取りづらい、・・・などなどです。効率良くコミュニケーションをしようと思えば、このような課題は自動的に機械の方でなんとかして欲しい技術になります。また、ステレオで収音しようと思ったのに、ステレオマイクがない、と言ったときにどうするかなども課題として面白いと思います。
音を分析・加工する
音はきれいに録って、きれいに再生することが求められます。一番きれいなのは自然に、今ある音をそのままに保存して再現することです。これは大変難しいことで、最近でも活発に研究されています。一方で、不自然でもいいので、欲しい音だけを取り出すような研究もおこなわれています。たとえば、難聴者にとってはターゲットとなる音だけを強調して聞かせてあげた方が聞き取りやすいと考えられます。また、今の音は高音が響いている、などといった分析も行われています。もっと分かりやすい表現もあってもいいと思います。たとえば、あの人の声は猫っぽいとか犬っぽいとかです。そんな新しいことも考えていきたいと思っています。
音を再生する
良いスピーカの定義のひとつに点音源というのがあります。これはスピーカから出た音があらゆる方向、前後左右上下にわたり均一に音が放射されるスピーカを指します。このようなスピーカは擬似的にはありますが、決定版はありません。一方で、ある方向にだけ音が出たり、ある領域にだけ音が留まったりするスピーカの研究も行われています。コミュニケーションをしている人同士だけで、ヘッドフォンを使わずに、自由な感じで音を外に漏らさずにコミュニケーションができたら、これはこれで素敵だと思いませんか?
機材(概ね揃いました!)
音の研究をする上では必須のものです。
- スピーカ・マイク系
- A/D, D/A
- パソコン
スピーカ・マイク系
音を収録して、音を再生して聞くためには、マイクとスピーカが必須です。録った音を聞くだけならヘッドフォンでもいいです。たいていは録音した音の良しあしをその場でヘッドフォンで確認します。目でも確認します。
マイクロホンアレーの実験研究をするためにマイクロホンを大量に利用しています。A/D, D/A
A/D, D/A装置は、アナログ信号である音をパソコンで扱えるようにするためにディジタル信号に変換する、またその逆で、パソコンに中にあるディジタル信号をアナログの音に変換するための装置です。昔は大掛かりな装置でしたが、デスクトップミュージックの発展で、民生品のUSBオーディオなどでもマルチチャンネルの信号が扱えるようになってきました。
USBオーディオインタフェースとして,RolandのOCTA-CAPTUER(UA-1010)を購入して利用しております。ASIOが利用でき,8ch同時入出力が行えます。現在のPCの計算パワーではリアルタイムにフィルタリング処理もできますので,リアルタイム実験も行えます。 もう少し多chを,ということで,MOTU 24 I/O PCIeも購入しております。こちらは24ch同時入出力が可能で拡張すれば96chまで同時入出力が行えますので,大規模なマイクロホンアレーやスピーカアレーの実験ができます。chごとにLEDも付いているので,入出力の様子が目でも確かめられます。また最近では,MADIを使ったシステムも構築しており,最大で192chの音響信号をコントロールできます。
パソコン
実は音の研究の多くは計算機(パソコン)で行います。マイクで撮った音を加工するにも、A/D変換器でディジタル信号になった音をパソコンの中で(結果的には四則演算を駆使した)アルゴリズムで処理します。どのようなアルゴリズムを使えば、よい音が作り出せるのか、が研究のひとつにキーワードになります。
パソコンは一昔前に比べると格段に速くなり,DSPなどを用いなくてもリアルタイムフィルタリングができるようになりました。リアルタイム処理はWindows Visual Stdio C++などでプログラムを記述していますが,アルゴリズム開発の基本の部分はMATLABを使っています。